ドラ映画とは何か ー映画『ドラえもんのび太の月面探査記』感想

アニメ日本映画『ドラえもんのび太の月面探査記』を見た。以下、ツイッターで視聴中に都度呟いた感想を、そのまま掲載する。

 

…25分間視聴終了。

新ドラ映画は初めての視聴なのに、なぜか懐かしく、そして凄い。旧ドラ映画の良い要素のモチーフを、しっかりと引き継いでいるから懐かしいと思うのだろうか。例えば、秘密道具を使った、子どもらしい想像力を具現化していくワクワク感。

秘密道具で、月の裏側にある文明の幻想を分かりやすく伝えるくだりは、クレバーでとても分かりやすい。

秘密道具という媒介物・ドラ・のび太の三要素の奇跡コラボ。のび太ADHD気質が物語の生成・発展に寄与し、ドラという未成熟かつ万能な進行役が物語を素晴らしいものへと加速させていく。

 マインクラフト的な、一から文明が生成するプロセスの躍動感を、映画を見ているだけで体験できる感じがして、凄く良い。

テンポはこぎみよく、お約束もサラッとしていて、しかし背景はそれなりに練られている。

映画オリジナルキャラ・映画オリジナル敵役の設定も、お約束的だが嫌味なく、スムーズに物語へと没入させてくれる。

 

これらの要素は、おそらく旧ドラ映画にあったものだ。藤子F不二雄の鬼才・奇才・異才・天才ぶりに、いまさらながら脱帽する。やはり、リメイク作品の新ドラ映画も見たくなっている。

ともあれ、『月面探査期』に今は集中したい。続きを見るのは明後日になりそうだ。とても楽しみだ。楽しみ過ぎる!!

 


…1時間11分まで視聴終了。

物語の性急さや、日本的な集団主義が齎す懸念等はある。しかし、それらは許せる。良点が凌駕している。

非常にダイナミックな物語展開。旧ドラの想像力によるワクワクする世界観と、モンスターハンター的な、近年のゲーム的な想像力の世界観が、融合し絡み合う。

のび太ジャイアンの物語への絡み方も、ロマンがあったりユーモアがあったりしてとても好ましいが、スネ夫の物語の絡み方に、僕は喝采。弱虫の勇気。旧ドラ映画版『小宇宙戦争』のスネ夫の葛藤と超克シーンが僕は死ぬほど好きなのだけど、本作でもそうした美点をうまく引き継いでくれている。

ひとり、お酒を飲みながら本作を見て、盛り上がり、楽しんでいる。物語展開に、壮絶な「大人の本気」を感じていて、本当に心地良い。旧ドラ映画の素晴らしい点を継承しながら、新ドラ映画の新たな美点を融合させる試みに挑戦しているのではないか。そんな予感を、本作から感じられてならない。

 

僕は本作が新ドラ映画視聴一作目、おそらく先の予感は的外れなんだろう。新ドラ映画を一通り見た後、旧ドラ映画も一通り見て、「ドラ映画とは何か」という問いに迫りたいと思ったりした。僕の個人史を振り返っても、最初に触れた超絶エンタメ作品とは『ドラえもん』であり、ドラ映画を振り返ることは、僕の子どもらしいワクワク・ドキドキ感を、あらためて味わい直すことなのだろう。それは、とても幸せな営為であり、僕がしてみたいと思える試みだ。

…さあ、いまはともあれ、『宇宙探査期』の続きを見よう。楽しみだー!

 


…全編視聴終了。

AI批判、ファシズム批判にも見えて面白かった。ただ、現代日本社会への同時代的な批判、というよりも、ドラ映画のモチーフ(人間と機械との共生、支配・暴力批判)を再演した結果なのかな、と思ったりした。想像力とは何か、というテーマの深掘りに、感嘆してしまった。

マッドマックス的な荒廃した世界が出てきたり、他作品の映画やゲーム、アニメのイメージが想起されるような設定も、面白かった。浅くパクって不快になるような感じも、あまりなかった。オマージュの仕方としてはサラリとしているが、雑然としすぎないバランス。ある程度の統制が取れていた印象。

 

終盤だけ、ややごちゃごちゃして見えた。近年見たスパイダーマンのアニメ映画版に感じたような、ピクサー的大円団に向けた、ネタの物量作戦というか、凄いシーンの猛烈乱打でごまかす感じが、少しした。映画で終盤まで作り込むことって、きっととても難しいのだろう。

それにしても、楽しい映画視聴体験だった。新ドラ映画は、いまの僕が見ても十分に楽しめる、素晴らしいエンタメ作品だとわかった。今後ゆるゆる、他のドラ映画も見てみたい。ドラ映画とは何か、僕なりの入射角で迫れたらな、と思った。