痴漢対策をしっかり考えるための「読み物」「アイデア」集
以前、「痴漢に関する論点」という記事をいくつか書いていましたが、まとめあげられずに中断していました。
この間、主にツイッターから痴漢対策に関する情報を集めていました。
そして、有益な情報が掲載されているサイト等を沢山知ることができました。
パッチワーク的に、それらの情報を以下に貼り付け、自分用のまとめとしたいと思います。
- 入り口として
まず、柴田英里さんのこちらのコラムが、非常に読みやすくシンプルにまとめられている上、大切な内容が沢山盛り込まれています。
しつこいナンパや痴漢被害を「言えなくする」ミソジニーとミサンドリー - messy|メッシー
ミソジニーとは「女性憎悪」のこと。
ミサンドリーとは「男性憎悪」のこと。
これらの価値観が底にあり、痴漢その他の性的嫌がらせを、社会で「言えなく」させている、というもの。しっかりした分析の眼差しが、記述を支えています。
さらにこちらの記事は、語られない/語り辛い痴漢・性的嫌がらせの実例が、読みやすい形で表現されていて、一読することで沢山の示唆をいただけます。
こちらの記事の記述は、女性にとっては「あるある」と感じるようなものでしょうし…。
一部の男性にとっては、意識もしていなかった全く知らない世界に感じて、大事な発見が多いかもしれません。
「「匿名性」を糧にぶつけてくる性欲が一番厄介」と述べているところは、現在蔓延している痴漢被害のほか…。
SNS上で起きているヘイト行動の一部にも、関連する知見だと思いました。
ムシャクシャのイラだちをぶつける「はけ口」のような痴漢、性的嫌がらせ、ヘイト行動が存在していること*1
…まずはこのことを、しっかり押えたいです。
- データから学ぶ実態と対策
痴漢の実態を調べたデータを学ぶことができる、ネット上の読み物を、ふたつほど列挙してみます。
ひとつめ、usausa1975さんによる、「痴漢に関する資料のまとめ」
こちらは、usausa1975さんが以下の4つの調査研究を分析した結果がまとめられています。
- 「電車内の痴漢撲滅に向けた取組みに関する報告書」警視庁(2011)
http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/h22_chikankenkyukai.pdf - 「女性専用車両の学際的研究 性暴力としての痴漢犯罪とアクセス権の保障」居永正宏ら(2008)
http://www.hs.osakafu-u.ac.jp/page2/page22/gakusai2007light01.pdf - 「女性専用車両に関する一考察~痴漢被害の実態とともに~」岡部千鶴(2004)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004029441 - 「男女間における暴力に関する調査」総理府(2000)http://www.gender.go.jp/e-vaw/chousa/08.html
ここでは、まとめのところだけ抜粋させていただきます。
•女性の14~49%が痴漢被害の経験がある。
•痴漢被害にあって通報するのは1割程度と考えられる。
•痴漢にあっても、3割から5割の人はそのまま我慢してしまう。
•1割程度の人が痴漢被害の目撃経験があるが、「見て見ぬふり」など何もしない人が半数程度いる。
•30歳代・40歳代の会社員が、通勤時間帯に、通勤で利用している路線の電車内で、偶然近くにいた被害者に目を付けて、痴漢行為に及んだ例が最も多い。電車内の発生箇所は、左右のドアとドアの間が多い。被害女性はスカートを履いていた人が多い。
•痴漢からの自衛策としては、女性専用車両が多くの人に利用されている。
•男性の約6割が痴漢に間違えられるのではないかという不安を抱いており、痴漢そのものに不安を抱いている女性の割合と同程度か、より多い。
痴漢被害に遭われた女性が、沢山存在していること。
通報できず、そのまま我慢してしまう被害者の方が大勢いること。
痴漢を目撃しても、見てみぬふりをする方が大勢いること*2。
…などの実態が、データからも確認できます。
ふたつめ、usausa1975さんも分析されている上記1.警視庁の調査を分析され、まとめの中で対策まで考察されているのが、紅蓮の猫さんのこちらのツイート群。
紅蓮の猫さんによる、電車内痴漢についての実態と対策調べてみた - Togetterまとめ
こちらもまとめのところだけ、抜粋させていただきます。
①痴漢は誰でもあう恐れがあります。犯人は被害者を選んでません。偶然近くにいた人を襲います。
②ドア付近から離れることで、痴漢にあう確率を下げられます。特にドア付近4隅は避けましょう。
③防犯カメラの設置は今後推進されるべき有効な手立てであると考えられます。
④時間帯を避ける、痴漢被害を訴える、には、窓口の周知、体制の整備、企業や学校側の対応がまず必要です。
⑤女性専用車両の存在は確実に被害を減らしています。
⑥車内アナウンスや警備体制の強化も今後継続して行うべき施策の一つです。
とても参考になる知見ばかり。
ただ、通勤や通学の場合、時間帯を簡単にズラせるものでもなく、ドア付近4隅を避けたくても、日によっては不可抗力でその位置に収まってしまう場合もありそうです。
紅蓮の猫さんも指摘されているように、窓口の周知や体制の整備、企業や学校側の対応が必要、とのこと*3。
そのことを前提にした上で、それでもできる個人的な対策を考えるために、以下のようなアイデア群は参考になりそうです。
- 被害に遭ったとき用の痴漢対策アイデア
Cookさんがツイッターにて、痴漢対策(被害時に周囲に気づいて貰うための方法)を集約して下さっています。
そこで紹介されている、被害に遭ったとき用の対策を六点、以下で列挙しておきます。
1)「アプリ」戦法。
言いたくても言えない「助けて」を鳴らす、痴漢撲滅アプリ『KOE』 | HeatApp!
もし、なにかあったら『KOE』を起動して、真ん中の「HELP」ボタンをタップ。
音量MAXで警告音が鳴り響き、周囲に身の危険を知らせることができる。
マナーモードにしていても自動的に音量が最大になるとのこと*4。
防犯ブザーは持っていなくても、スマホなら常に持ち歩いているもの。痴漢に限らず、とっさの大声が出ない場面で力になりそうなアプリ。
2)「ハンカチ」戦法(「体調不良(のふり?)」戦法)
痴漢に接触されたら、ハンカチに口を当てて具合悪そうに振る舞う。
そのほか、具合が悪いということで、しゃがみこむ、吐きそうな素振りを見せる、という案も挙げられていました。
実際に被害に遭ったら、事実、そのように具合が悪くなるような気もする…。
それを行動に表すことが、更なる被害を防ぐことにつながるのかもしれません。
3)「クリアファイル」戦法
「助けてください。警察にすぐ連絡してください」と書いた紙をクリアケースにいれたものを持ち歩く。
ストーカー被害に遭っていたとき、これを通りがかりの人に渡し1度連絡して貰えた、とのこと。痴漢にも応用可能かも、との提案です。
提案者の方は、警察の方から「定期サイズのカードに書いて持ち歩け」と言われたそうですが、道端で確認しづらいものを知らない人から渡されても普通は避けると思い、パッと見で困っていることがわかるようB5~A4サイズの雨にも強いクリアケースに大きく書いて入れていた、とのこと。
「刑事さんの名刺も入れておいた」というのも、非常に優れた工夫だなあ、と思いました。見た人が動きやすくなる効果がありそうです。
提案者の方曰く、
「変な人に絡まれやすい人は、「助けて」クリアケースとかカードを持ち歩くと良い、とっさすぎて声が出なくても、最悪そのカードを通りすがりの誰かに渡すことだけに集中する、とか周知されたら良いのではないか」
…とのこと。
ムシャクシャのイラだちをぶつける「はけ口」のような痴漢、性的嫌がらせは、抵抗できなそうな方を狙ってくる。しかし、悪いのは、そういう対象者を狙ってくる卑劣な加害者です。
「自分は変な人に絡まれやすいかも…」と思われた方は、お守り代わりにでも「クリアファイル」や「カード」を持つことは、良い方法かもしれません。
4)「ケータイかざし」戦法
「痴漢のいる方向にケータイをかざす(後々言いがかりを付けられないためにカメラ等は起動させない)」というものです。
…ちょっと勇気が必要だったり、体勢によっては難しい場合もあるかもしれませんが、提案者の方はこの戦法で一度撃退に成功しているとのこと。
5)「ちょっと!」戦法、ダメなら「周囲に場所移動を伝える」戦法
きつめの怒り口調で「ちょっと!」とだけ声を上げる。
察しのいい女性が周りにいれば「痴漢?」とか「どうかしました?」と声をかけてくれます。
それでダメなら「場所を移動させてください」と周りにお願いする。
提案者の方も「この戦法は実用的だ」とオススメしていますが、僕もその通りだなあと感じました。
6)「身内いるよ」幻惑戦法
痴漢に遭ったら「お兄ちゃん」や「お父さん」とボソッとつぶやく、というもの。
かなり難しいかもしれませんが、あたかも「向こうに身内の男性がいるんだ」というようかたちで、声を出してみるのは有効かも…?
(フリだとバレたときが、返って怖いかな…)
-
目撃したとき用の痴漢対策アイデア
Cookさんの上記ツイートでは、痴漢を目撃した方が周囲にそれを気づいて貰うための方法についても、集約されています。以下、ふたつ列挙します。
1)「体調気づかい」型声かけ戦法
犬越 on Twitter
「あれ、痴漢に遭ってる…?」と思えたら、被害者と見られる方に、「具合悪そうに見えますけど、大丈夫ですか?」と声をかける。
この戦法は、僕にはとても良いと思いました。冤罪のこともあり、躊躇しがちな状況の中で、この戦法は非常に有効だと思う。
痴漢対策のことを考えていて、つくづく思うのは、痴漢被害/加害者の周囲の人々が、見知らぬ人同士の閉鎖された空間の中であっても、人を人として尊重し合う姿勢を、協力して互いに作り上げていくことこそ大切だ、ということものです。
僕は、周囲の人が「あれ、痴漢かな…?」と思ったら、なるべく躊躇なく「体調気づかい」の声かけをしたら良いと思っています。こういうアクションが、人を人として尊重し合う雰囲気を作り出す。
勘違いだったら、「あ、すみません。勘違いでした」で済みますし。
2)「緊急速報メールの着信音」戦法
緊急速報メールの着信音を鳴らし、周囲の人たちがみんなごそごそスマホや携帯見だした隙に、被害に遭われている方へ合図して、自分の後ろに入らせて庇う、というもの。
テクニカル! すげー!
鳴らし方は、緊急速報メールの受信設定画面で受信音確認から可能、とのこと。
この戦法は、ウデがいるかもですね。
- おわりに
…これらの対策・戦法については、読まれた方が…
「自分にとってはどれが一番使いやすいかな…」
…とあれこれ考えて、自分流にアレンジして活用するのが良いんじゃないかなあ、と思いました。
僕の場合は、とりあえず…
□ 被害に遭った場合は、5)「周囲に場所移動を伝える」戦法
□ 目撃した場合は、1)「体調気づかい」型声かけ戦法(被害に遭われている方が、ハンカチを当てていようがなかろうが、「あれっ」と思ったら、なるべく積極的に声をかけるイメージで)
…を使ってみたいなあと思っています。
usausa1975さんと紅蓮の猫さんの上記サイトからは、さらに考えたいと思う情報や論点が沢山掲載されていたのですが、それはとりあえず今後の宿題にしたいと思っています。
*1:いじめの構造とほぼ同じですね…。
*2:痴漢冤罪の恐れが、大きく関連しているようです。詳しくはusausa1975さんの元サイトを参照のこと。
*3:さらに突っ込んでいけば、自分の属する組織の中で、痴漢対策のことを話し合えるような文化があるか、というところが焦点になるだろうと思います。ここの部分を、僕はもっと深堀りしていきたい。
*4:「微妙な」痴漢被害に遭っているときは、これを押すのを躊躇するかもしれませんね…。音量MAXですから、押すことに思い切りと勇気が必要そうです…。加害者も微妙なところを狙ってきそうだし…。ただ、こういうアプリを持ってるぞ、と思えるだけで勇気が出るかもしれないですし、「使うぞ使うぞ」とうまくアピールできれば、加害者側がアプリの存在に気づき、恐れて行為を止める可能性もありそうです。