痴漢をめぐる論点(ツイッターより)②

前回の記事の続きです。

 

  • 男性が、他者から性的な対象として見られる、ということ

 

 男性だと、女性からの痴漢なんて無いってことになってるから、余計に、声をあげづらいですよね。嫌な思いをされたでしょう。RT ちなみに男の僕も高校時代に二回ほど電車で痴女(←たぶん50代)にあってましたよっ、てことも不意に付け加えておきます。・゜・(ノД`)・

 

 宣さんの被害には非常に同情しますが、男性の、「自分の体が他人にとってエロいわけがない」という鈍感さも相当なものですよね。男性は皆、萩尾望都先生の『残酷な神が支配する』を読んで、その鈍感さが自分の精神と人生を破壊するということを知るべき!! 

 

「自分は美形じゃないから…」凄くわかります。男性は、痴漢が実際にどれぐらい多くて、美しさ・若さなどより「文句を言わなさそう」な人を狙いがちというのを知らないので、「ブス(ババア)なのに痴漢されるかよ!」とか言いますが、翻ってそれ男性の被害も隠蔽してますよね @mirugi_jp 

 

この視点を、ヘテロ男性として受け止めるとは、どういうことか。

 

 

突然ですが、僕は専業主婦の母から、凄くかわいがられて育った、末っ子です。

 

そんな育ちの背景を持つ、30代半ばの僕が今、様々な人間関係を経験する中で気づくのは…。

 

一部の年上の女性との関わりが、とても楽だと言うことです。その女性から、自然と好意を持たれたり、何かと世話を焼かれたり助けを受けたりして、僕は得をすることが多い。

 

この例を挙げることは、僕が一部の年上の女性から、性的に求められている、と言いたいわけではありません(この点は、さらに深めて考察すると、こうは割り切れない、より複雑な問題かもしれません。母娘問題ならぬ、母息子問題。要するに、マザコン問題。「母は息子と寝たいのか?」「息子は母と…?」。おそらくはフェミニズムにおいて、すでに検討されている論点だと思います。これを僕が当事化作業として、要するに「息子側」から問い直すとは、いったいどういうことなのか?)

 

きっと僕は、ある種の年上の女性に好まれる(?「この子はもうホントに、ほうっておけないわ!」と思わせるような、依存物質を脳内に出させる?)ような媚態を、身に着けているのだと思います。母との関係で、その「媚態」という資源を獲得したんだと思う。…とてもキモいですね。書いてて思う。

 

言いたいのは、僕は僕が生まれ育つ中で獲得したジェンダー的な資源を利用して、人間関係をうまく渡り歩いているということです。その資源を無自覚に行使することが、ある種の搾取や暴力を孕んでいるかもしれない、ということです。ここを自覚できるかどうかは、男性学的にとても大切なような気がします。

 

 

女性は、自分がどのように見られているか、容姿や振る舞い方のセンスも含め、自分がどのような資源を持っているか(もしくは、いないか)に、敏感にならざるを得ません。

 

なぜなら女性は、相当に幼い時期から、「見られる性」としての血みどろの闘いに、巻き込まれているからです。「見られる性」としてすぐに評価されるような環境が土台となり、何よりも女性同士で、過酷な生き残り競争をせざるを得ない構造がある。

 

化粧などをめぐる論考を読んでいると、その過酷な闘いを渡り歩いてきた状況が想像でき、男性の状況とのあまりの違いに、愕然とさせられます。


Love Piece Club - 第一回 上野千鶴子 化粧をめぐる省察 / 上野千鶴子

 

 

…うーん、金田さんのツイートを確認し直してみると、僕自身の例は、やっぱりちょっと論点がズレてますね。

 

金田さんのツイートから学ぶべきは、男性も、性的対象としての自分を、問い直す必要があるということです。それは男の身体を持つ人にとって、日常で相当に自覚的にならないと、難しい作業だと思われます。僕の例は、僕の当事化作業としてそれを今やってみようと思ったときに、思い浮かんだ例、ということでした。

 

そして金田さんのツイートやそのやりとりからは、嗜虐欲に基づく痴漢の被害に遭う可能性は、決して女性だけではない、という事実も、突きつけられていると思います(その被害を受ける可能性が、女性よりも圧倒的に低いことは、言うに及ばず)。

 

「こいつは大人しそうだから、逆らわなそうだから、あっさり従いそうだから、好き放題に滅茶苦茶にしてやろう。不細工だから、ダサいから、こんなふうに性的に求められたことはないだろう? 哀れな奴だな。性的な経験を恵んでやるから、せいぜい興奮しろよ。ま、お前がどう思おうがどう感じようが、関係ない。弱くて何もできないお前の意志や感覚なんか関係ない。お前の存在なんかどうでも良い。ただ、蹂躙するだけ。あー、超興奮する」。

 

こんな欲望から来る暴力に、男性だって曝される危険性がある。そのことを、安全で安心な自分の性的ファンタジーの中ではなく(小松原香織「『レイプされたい』という性的ファンタジーについて」『フリーターズフリー vol.02』)、突然実際に起こるリアルな悲劇として自分の身に降りかかることを、その恐怖を、どこまで自分のこととして、想像できるか? 

 

こんな思索を経由した上で、さらに、体力差のある女性の身体を持つ人の身に、この悲劇が降りかかったとき、いったいその人はどんな内面を持つに至るのか…。それを想像してみなくてはなりません。男の身体を持つ自分には、とても困難なことですが…。

 

萩尾望都さんの『残酷な神が支配する』というマンガ、僕はまだ読んでいないのですが、ぜひ読んでみようと思いました。

 

(きっと)続きます。